【完】短編集~幼馴染み~
「…ここが、図書室。ここが、職員室。ここが、食堂。最後に、保健室ね」
「ふ~ん。…っつ」
「なに、どしたの?」
「ちょっと紙で切った」
「はぁ…、保健室入ろ。失礼します…って、先生いないや。ま、座りなよ」
あたしは絆創膏を取りだす。
「手、出して」
「ん」
ペリッとはがし、指に巻き付けた。
「サンキュ」
「どういたしまして」
「やっと、笑ってくれた」
「へ?」
「葵、ずっと笑ってくれねぇんだもん。嫌われたと思った」
…嫌いになりたいよ。
けど、あんたがかまったりするから…また、あのころの感情が芽生える。
「嫌いだよ」
「は?」
「嫌い、嫌い!あんたなんて…「ちょっと黙れよ」
そう言ってあたしにキスをしてきた。
「……!?」
解放された唇。
頬に、涙が伝う。
「…なにっ、すんのよぉ……」
「葵が、わけわかんねぇことばっか言うからだろーが!!」
「あんたのほうが…!健太のほうがわけわかんないよ!!あたしにキスして何が楽しいの!?そんなにあたしのことからかいたいわけ!?だったらもう関わらないでよ!!」
「…んだよ。俺の気持ち、これっぽっちも伝わってねぇのかよ。さっきだって、大嫌いトカ言うしよ…」
…聞こえてたんだ。

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