セックス·フレンド【完結】
それから、あたしは毎日隆也を見舞った。


美容室の先生には、身よりのない叔母が入院したと嘘をつき、暇な時間に抜けさせてもらった。


一時間も一緒には過ごせなかったけれど、洗濯を届け、他愛のない話をするだけで、あたしは幸せだった。


手を繋いでどこかへ出かけるよりも、セックスをするよりも、隆也の世話をすることで(それは、洗濯物を届けたり、食器を下げたり、花瓶の水を取り換えたり)ずっと深く繋がっていられるような気がした。


顔見知りになった、看護師さんが、


「優しい彼女ね、大切にしなさいよ」


と隆也を茶化した時、彼は否定しなかった。


同室の叔父さん達が、


「可愛い彼女だねぇ」


と言った時も、彼は


「ありがとうございます」

と言っていた。


そのたびに、あたしは、幸福に身を震わせた。


それが、隆也の答えなのだと思った。
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