セックス·フレンド【完結】
もちろん覚えていた。


あの日、あたしたちは普段はできない遠出をしようと張り切っていた。


夏だったので、目的地を海に決めた。


新しい水玉模様のビキニをカバンにつめ、魔法瓶に冷たい紅茶を入れた。

はりきって出かけたものの、運転に慣れない隆也は、やれ話しかけるなだの、CDをとめろだのと、珍しくぴりぴりしていた。


挙げ句、渋滞に巻き込まれ、海へたどり着いた頃には、すっかり険悪なムードが漂っていた。


しかも、ついた途端、追い討ちをかけるように、今の今まで晴れ上がっていた空に暗雲が立ち込め、ざあざあと雨が降りだした。


結局、新しい水着を披露することなく、そのままUターン。


帰り道も渋滞。


あたしは、すっかり悲しくなって、ずっと黙ったままだった。
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