セックス·フレンド【完結】
「着替える前でよかったな。危うく風邪をひくところだった」


帰り道、隆也はそんなふうにあたしを慰めた。


不器用で言葉の引き出しが少ない、彼なりの精一杯の気づかいだった。


あたしは黙っていた。


悔しかった。


不機嫌にドライブした隆也の態度も、突然の雨も、新しい水着を見せられなかったことも、そんな風にしか慰めることしかできない彼にも腹が立った。


隆也は、そんなあたしに気づいて、初めてハンドルから片手を離し、あたしの手を握った。


大きく、豆だらけでごつごつとした手のひらは、でも、とても暖かかった。


けど、あたしは、その手をピシャリとはねのけた。


彼の手の温もりすら憎らしかった。
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