セックス·フレンド【完結】
「もしもし」


隆也が電話を耳に当てながら、こちらにごめんのポーズを向ける。


あたしは、泣きたいのをこらえながら、笑顔で首を振った。


「うん。今?えっと…飯食いにきた。うん。誰って…友達とだよ。ミキは?」


ドキンと心臓が波打った。


【ミキ】というのが、恋人の名前らしい。


それに、友達だなんて…。



「そうだったのか?大丈夫?」


隆也がちらりとあたしを見た。


何かあったのだろうか?


気になったが、でも、あたしは、聞いていないふりをして、窓の外を眺めた。


けれど、全神経が、隆也と恋人の会話に集中していた。


「え?大丈夫なのか?うん。わかった」


何を、話しているのだろう。


いらいらしてタバコが吸いたかったが、ここの店は禁煙だと言われたのを思い出して、我慢した。


「わかった。とりあえず後で」


ようやく電話を切ると、隆也は「ごめん」と言った。


「ごめん。彼女、熱を出したみたいで。今日は帰らないと…」


夢のような時間は、予定よりずっと早く幕を下ろした。
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