甘い罠
木村はいつの間にか眠ってしまっていた
体がひどく疲れていた

壁掛けの時計に目をやると、夕方の6時になるところだった

帰宅してまだ開けていなかったカーテンの隙間から、強い西日が木村の顔を照らす

テーブルの方に目を向けると、さっき開いたままの手帳が置いてあり、鞄からはみ出したクリアファイルも散らばったままだった

額に腕を乗せ、木村は深いため息をついた

さっきの田崎とのやりとりが、夢ではなかったとかなりがっかりした


熱いコーヒーでもいれようと、キッチンへ向かい、やかんを火にかけた

しばらく使っていなかったせいか、排水口の辺りから、生臭い臭いがする

事故に遭った日の朝飲んだコーヒーカップが、もちろん洗われず流しにあった

乾燥し、茶色く底にこびりついている 


あの日の朝、自分がコーヒーを飲んで出たことは覚えてるんだな
と、木村は一人苦笑した

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