甘い罠
ふと、流しの横にあるゴミ箱に目が止まった

見たことのない包装紙が、丸まって捨てられている

木村はなんとなくそれを手に取り広げてみた

包装紙にはのし紙が貼り付けてあった

横峯 圭司・瑞穂

結婚式の引き出物が包まれていたような感じだった

横峯圭司は、木村の大学時代の友人だ


しばらく呆然と、そののし紙の名前を木村は眺めていた

急に、背筋をゾッとするような寒気が走った

慌ててリビングに戻り、パソコンが置かれている机の引き出しを勢いよく開けた

その引き出しは、普段から郵便物や請求書など入れてある場所だった

郵便物の束を鷲掴み、机の上にばらまくと、一つ分厚い封筒が目についた

ベージュの、少しザラザラした手触りのするその封筒は、結婚式の案内状だった

送り主は、横峯 圭一郎
木村の友人である、横峯圭司の父親だ

木村は慌てて中身を見た

「8月2日(日) 吉日」

木村は愕然として、ヘタヘタその場に座り込んだ

8月2日は、木村が事故に遭う二週間ほど前だ

木村は立ち上がり、もう一度ゴミ箱に捨てられていた包装紙を見た

更にゴミ箱をあさると、恐らくその包装紙に包まれていたと思われる、大きめの箱が出てきた

ぐるっと部屋中を見回したが、何が入っていたのかは分からない


分かるはずもなかった

木村には、横峯圭司の披露宴に出席した覚えが、まるでなかったのである


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