甘い罠
「瑠璃さん、今度木村さんに会わせてくださいよ」

心なしか菜々子は少しワクワクしているように瑠璃には見えた

「私、結構見る目あると自負してるんです」と菜々子は言う

「何よ、それじゃまるで私が見る目ないみたいじゃない」瑠璃はむくれた

「そうじゃなくて

だって瑠璃さんは少なからず木村さんに好意を持ってるじゃないですか
何やっても素敵に見えるだろうし、いいように解釈してしまうと思うんです

恋は盲目っていうじゃないですか

私思うんですけど、同じ日の同じ時間帯に、同じ会社の2人が、同じ非常階段から転落するって偶然にも程があると思うんです」

「同じ」を連呼され、瑠璃は目をしばたいた

「記憶喪失とやらなら、木村さんは杉山さんを知らないって、まだ断定出来ないんじゃないです?
本当は知り合いだったのに、木村さんが忘れてるかもしれない

突き落としたことすら忘れてる可能性だって0じゃないんですよ?


ひょっとしたら…
忘れているふりをしている可能性だってあるんですからね」

菜々子のつり上がり気味の目が、更に鋭く瑠璃には見えた




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