甘い罠
木村の部屋は、繁華街から少し外れた4階建てのマンションの一室だった

間取りは2LDKで、ベランダもあり、見晴らしがいい

男の一人暮らしにしては、整理整頓してあり瑠璃は驚いた

「瑠璃ちゃんが来るから掃除したんだよ(笑)」と、木村は照れたように言ったが、なんとなく日頃から綺麗にしているように瑠璃には見受けられた

キッチンを見て、更に瑠璃はびっくりした

「料理するの?」

木村の台所は調味料も豊富で、それらは全部使いかけてある
ほんだしやら味醂に料理酒、普段料理をしない人の台所には絶対ないものだろう

「たまーにね

俺、親が早くに逝ったから、一人暮らし歴長いんだよ

コンビニ弁当には飽き飽きしてね
ちょっと自炊もするようになったんだ」

夕飯の食材を冷蔵庫に詰めながら木村は言った

チラッと見えた冷蔵庫の中にも、卵や味噌、生肉なども入っている

確か、大学生の頃に交通事故で両親を亡くしたと聞いた

小さい子供じゃなかったとはいえ、一人っ子だった彼がどんなに心細かったろうと思うと、瑠璃は心が痛んだ

一人台所に立ち、慣れない手つきで料理する木村の姿を想像すると、切なくなった


「今日はうんと美味しいもの作るから期待してて
口に合えばいいけど」

瑠璃は、料理だけは自信があった



瑠璃が調理している間、買ってきたクリスマスツリーの飾りつけを木村はしていた

彼の部屋の台所に立ち、彼の為に料理している幸せを瑠璃は噛みしめていた

< 90 / 104 >

この作品をシェア

pagetop