甘い罠
「そういえば…」

木村が箸を止め、瑠璃の顔を見た


「前に瑠璃ちゃん、碧ちゃんがかなりイメチェンしたようなこと言ったよな?」

瑠璃は思い出したように頷く

「そうそう!
初めて木村さんに会った夜ね?

あん時はびっくりしたもの~
別人に見えたくらい」

木村はまた考えているような表情になった


確か初めて会った夜、一緒にタクシーで帰る途中にその話をしたのだ

そして、その時も木村の様子がおかしくなったことを瑠璃は思い出していた


「あ…
もしかして、前の碧を覚えてない?」

瑠璃は恐る恐る聞いた

「うん…

髪もバッサリ切ったんだろ?

長かった覚えないんだよなぁ
碧ちゃんはずっとああいう感じだった気がしてさ」

木村は首を傾げる

「髪、この辺まであったのよ」と、瑠璃は自分のあばら骨の辺りに手を当ててみせた

「色も今よりもっと明るくて、いつもコテで巻いてた

カールしてたの

入社した頃から最近までずっとそうだったはずよ

なんかメイクの感じとか、服装も変わったのよねぇ
まぁそこまでは男の人は気づかないかもしれないけど…」

木村はしばらく考えていたが、「ダメだ、思い出せない」と首を振った


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