甘い罠
瑠璃は木村の部屋の合い鍵を持つようになっていた
もちろん、木村から預かったものだ

平日でも比較的早く帰宅出来る瑠璃は、職場から木村の方の部屋に帰り、掃除をしたり食事の準備をしていた

木村は、接待などで帰りが遅くなることも多い
雑炊や汁物など、胃に優しい料理を準備して、木村の帰宅を待たずに瑠璃は帰るようにしていた

帰りが深夜に及ぶこともある木村の帰りを彼の部屋で待っていることは、なんだか恩着せがましい気もしたし、掃除や家事をして帰っている方が、気が利いている気がした






木村の部屋でのホームパーティーを2日後に控えたその日、終業間際の瑠璃の携帯に、木村からメールが入った

(お疲れ。
今日うち寄るかな?
悪いんだけど、帰りにクローゼットの中にある紺のスーツ、クリーニングに出しててもらえたら助かる(^_^;)

今晩も接待だから遅くなる
お茶漬けが食べたいな~<(_ _)>)

文面を見て、瑠璃はクスッと笑った

こういう多少図々しいお願いでも、木村に甘えられると瑠璃は嬉しかった


木村の冷蔵庫の中を思い出し、あれこれと買い物を考えながら会社を出た

木村のマンション近くにあるスーパーで、漬けてある高菜と、乾燥したしらす、鰹節、あと柔軟剤が切れそうだったことを思い出し、それも買って部屋へと向かった


ピンキーのキーケースに付けた鍵で扉を開けると、
止まっていた室内の空気が急に動き出す

ひんやりとしていて、瑠璃は身震いした






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