甘い罠
思い返してみても、木村の口から杉山の話を聞いたことはそんなになかった

面識がなかったから当然なのだろうが、同じ日の同じ時間帯に非常階段から転落したのだ

当然気になっただろう


「あそっか」瑠璃は顔を上げた

キュッと蛇口を止め、流しにかけてあるタオルで手を拭いた

あの資料はパソコンで作られていたのだから、そのまま保存されているかもしれないと瑠璃は思い付いた

窓際の机に置かれているノートパソコンの前まで行き、一旦躊躇する

付き合っているとはいえ、他人のパソコンを勝手に見ることに抵抗があった

でも保存してあれば、フォルダーをクリックすると日にちや時間帯も見れる

瑠璃はパソコンの電源を押した

椅子に腰掛ける気になれず、中腰のまま次々にあらゆるフォルダーを開いてみた

木村のパソコンの中身は、ほとんどが仕事関係のものばかりだった
その他は、デジタルカメラから保存された写真などがあった


全てのフォルダーを開き終わると、瑠璃はようやくパソコンの前の椅子に腰掛ける気になった

結局、木村のパソコンからは、杉山孝雄の資料は出てこなかった




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