ヘタレな彼氏と強気な彼女
後悔に肩を落としながら、席に戻った私を待っていたのは、一輝の余裕たっぷりの微笑み。
「千歳」
そう呼ばれて顔を上げたら、目の前にあったのは真っ赤なバラの花束。
「誕生日おめでとう」
囁かれてからやっと、自分の誕生日も忘れていたことを思い出す。
両手にあまるくらいの、鮮やかなバラの束を受け取った私に、うらやましげな周囲の目線が集中する。
「愛してるよ、千歳――これからも、ずっと俺のそばで笑っていてくれ」
並ぶ高級料理の数々、豪華なバラの花束、そして強気で、余裕に満ちた最高の彼氏の笑顔。
これほど幸せなことはない、はずなのに――その途端、私は呟いていたのだ。
「笑えない……」
「え?」
訝しげに問い返す一輝をまっすぐに見て、もう一度口を開く。
「私、笑えない――いつもの一輝のそばじゃなきゃ、笑えないの!」
「千歳――」
ガタン、と席を立つ私を呼び止める一輝。
戸惑った顔に胸が痛むが、もう自分の中で出た結論は変えられなかった。
「ごめんなさい!」
叫んで、店を飛び出す。
どうすればいいのか、どうしたら元に戻ってくれるのかなんてわからない。
けれど、あのまま今の『一輝』と一緒に誕生日を過ごすことなんてできなかった。
「待ってくれ、待つんだ! 千歳!」
追いかけてくる一輝を背に、私は走る。
走って、走って、気づいた時には赤信号の横断歩道に飛び出していたのだ。
「危ない、千歳――!」
咄嗟に腕を引かれ、一輝の胸に守られる。
目前に迫ったトラックのライトに射抜かれながら、私は逆に一輝をかばうように抱きしめていた。
「お願い、一輝――元に戻って……!」
守られなくていい。
女の子らしく扱ってもらわなくたっていいから。
だから、お願い。
「ヘタレの一輝が好きなの――!」
精一杯叫んだのを最後に、意識が暗転したのだった。
「千歳」
そう呼ばれて顔を上げたら、目の前にあったのは真っ赤なバラの花束。
「誕生日おめでとう」
囁かれてからやっと、自分の誕生日も忘れていたことを思い出す。
両手にあまるくらいの、鮮やかなバラの束を受け取った私に、うらやましげな周囲の目線が集中する。
「愛してるよ、千歳――これからも、ずっと俺のそばで笑っていてくれ」
並ぶ高級料理の数々、豪華なバラの花束、そして強気で、余裕に満ちた最高の彼氏の笑顔。
これほど幸せなことはない、はずなのに――その途端、私は呟いていたのだ。
「笑えない……」
「え?」
訝しげに問い返す一輝をまっすぐに見て、もう一度口を開く。
「私、笑えない――いつもの一輝のそばじゃなきゃ、笑えないの!」
「千歳――」
ガタン、と席を立つ私を呼び止める一輝。
戸惑った顔に胸が痛むが、もう自分の中で出た結論は変えられなかった。
「ごめんなさい!」
叫んで、店を飛び出す。
どうすればいいのか、どうしたら元に戻ってくれるのかなんてわからない。
けれど、あのまま今の『一輝』と一緒に誕生日を過ごすことなんてできなかった。
「待ってくれ、待つんだ! 千歳!」
追いかけてくる一輝を背に、私は走る。
走って、走って、気づいた時には赤信号の横断歩道に飛び出していたのだ。
「危ない、千歳――!」
咄嗟に腕を引かれ、一輝の胸に守られる。
目前に迫ったトラックのライトに射抜かれながら、私は逆に一輝をかばうように抱きしめていた。
「お願い、一輝――元に戻って……!」
守られなくていい。
女の子らしく扱ってもらわなくたっていいから。
だから、お願い。
「ヘタレの一輝が好きなの――!」
精一杯叫んだのを最後に、意識が暗転したのだった。