ヘタレな彼氏と強気な彼女
 目を開けたら、真っ白な天井が見えた。

「大丈夫ですか? 聞こえますかー? ここ、病院ですよ」

 看護士さんに覗き込まれて、あわてて起き上がる。

 すぐ隣に一輝が寝ていて、まだ瞳を閉じたままだった。

「あ、彼なら大丈夫ですよ。トラックがうまく避けてくれたから、二人とも単なる脳震盪とかすり傷です。少し休んだら帰っていいですから」

 心配した私の顔がわかったのだろう、看護士さんが先回りして教えてくれる。

 女性で、同じ年頃だからなのか、彼女は笑って、声をひそめた。

「彼ね、ずっとあなたのこと抱きしめて離さなかったのよ。だから仕方なく一つのベッドに寝かせてたの。腕枕してあげてたのは、あなたのほうだったけどね」

 おかしそうに囁かれて、耳まで赤くなった私の肩を優しく叩いて、「二人とも無事で、よかったわね」と笑って戻っていく看護士さん。

 そうだ、よかった。それはそうなんだけど、一輝は――!?

「ちっ、千歳! 千歳は!?」

 がばっと起き上がって叫んだ一輝と、覗き込んでいた私は至近距離でぶつかりそうになって、あわてて離れた。

「わっ、ごっ、ごめん――千歳、大丈夫?」

 照れたように赤くなって、それからもう一度訊ねた一輝に頷く。

「よかったあ――本当によかったあ、千歳が無事で。僕、トラックにひかれそうになる夢見ちゃって、それで千歳が心配で――それで、あれ!? ここ、病院!? あれは本当だったの? ねえ千歳、どうなってんの――!? うわあっ、っていうか千歳、どうしたのその格好! いつもの千歳じゃないよー何がどうなってんの!?」

 パニックに陥りかけの瞳は、いつもと同じ一輝のもので――そうわかった瞬間に、私は一輝に思い切り飛びついていた。

「よかった……!」

 真っ赤な顔で受け止めてくれた腕は、それでもどこか力強い気がした。
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