ヘタレな彼氏と強気な彼女
 そう、翌日は確かに朝から忙しい日だった。

 月曜で、また月末に重なっていたからいろんな書類業務にも負われてて、もちろん定時に終われるわけなくて。

 ようやくタイムカードを押した時にはもう八時を過ぎていた。

 やっと帰れる、そう思ったら今度は部長につかまって。

 定例会、という名の男だらけの飲み会に連れ出されて、付き合わされること三次会まで。

 今年の春から部長になったばっかりだから、みんなにいいとこ見せようとして張り切ってるのはわかる。

 でもなんで事務の私まで借り出されるんだか。

 飲みっぷりがそこらへんの男より立派だからだとか、いや言動までもが男にしか思えないとか、男に生まれてきたらよかったのにとか、あれこれ盛り上がられて。

 うんざりしていたこところに、心配した一輝から何度もメールと着信があって、更にはまたうじうじ愚痴が始まって……もう疲れ果てていたのだ。

 だからようやく家路に着いた時も、近くのコンビ二で缶ビールとするめを買い込んで、一人で朝まで飲んだ。

 次の日が祝日だからってそれはもうしこたま飲んだ。

 それは覚えてる――覚えてるんだけど、一体これは何だろう。

 二日酔いでがんがん痛む頭を押さえて、見上げた私の前で配達員のお兄さんは爽やかに笑った。

「お届け物です。印鑑お願いしまーす!」

 受取人は確かに私の名前。でも、差出人はうさんくさげな健康食品会社で、ラベルに書かれた商品名にも心当たりなんてまったくない。

 けれどいつまでも笑顔で待っているお兄さんが気の毒になったから、とにかく印鑑を押した。
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