ヘタレな彼氏と強気な彼女
 サプリメント――そう書かれたラベルが貼られた、小さなダンボール箱。

 箱の側面には、ネットで有名なショッピングモールの名前が躍っている。

 普段サプリメントなんかに頼らなくても健康そのものだから、買った覚えはない。

「おかしいなあ……」

 呟きつつ、カッターで開け、中を覗くと小さなビタミン剤のような瓶と一枚の紙。

 やっぱり、酔っ払って何か注文しちゃったのかな。

 ストレスがたまるとネットで日用品とか頼みまくったりする癖があることは自覚していたから、今度もきっとそうなんだろう。

 やっちゃった、とため息まじりに瓶を持ちあげた私は、目に映った文字に顔をしかめた。

「強気になっちゃうぞ、特効薬――?」

 なんだこの怪しげな商品名は。

 思わず床に落としそうになったけど、なんとか掴んで、もう片方の手で説明書きらしい紙を広げる。

 ――強気になっちゃうぞ特効薬。これを飲んだらヘタレなあなたも強気な俺様に!? 彼女に喜ばれること間違いなしです!

 たったの二行で説明書きは終わっていて、それ以外には何も見当たらない。

 薄茶色の小瓶を覗き込むと、ビタミン剤にしか見えないタブレットが一つきり。

「うーわ……本気でやっちゃったみたい。これ、いくらだったんだろう」

 きっとカードで決済したんだと思うけど、こんなうさんくさい商品を買ってしまうなんて。

 しかも文面からしたら男向けの商品なのに、ってなんで私が買ってるんだよー!

 そうだ、返品――思い立って顔を上げた先に見えたのは、ラベルにくっきり書かれた、返品不可、の赤い文字。

 玄関先で思わずしゃがみ込む。

 二日酔いの頭痛と吐き気と一緒になって、後悔が回る。

 
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