ゆすらうめ




───・・・思い出せない。


「真桜、大丈夫なの?」


「うん。もう止まったみたい」


気付けば口の中に広がっていた甘酸っぱさは消えていた。

何かとても大切な事を、私は忘れている。
…そんな気がした。


「これからどうするよー?私ももう暇なんだよねぇ」


「んー…」


持っていたままの飴の缶を鞄にしまう。

何も聞かないでいてくれる藤香の優しさが身に染みる。

おそらく藤香が本当に暇になることなんて、今までもこれからも二度と来ないだろうに。


ふっと、パンフレットを見ながらある一点に惹かれた。


「あ、じゃあ、この『壬生寺』に行かない?』


「おっけーい。確かここって新選組所縁の地の一つらしいじゃん。私、結構新選組って好きなんだよ実はっっ」


…初耳である。


「え、そうなの?まぁ、今日ここでお団子屋さんがサービスしてるらしいから早く行こっ」


「あ、真桜ってば今のが本心でしょう?」


「…えへへ。ご名答っ」


そう、この『今なら茶団子と御手洗団子をサービス中!壬生寺にて』という宣伝に引き寄せられたのだ。


「じゃあまぁ、行こっかぁ」


「お団子お団子っ」


「本心だだ漏れだわアホっ」


こうして私達は、さっきのシリアスな雰囲気と打って変わって、るんるん気分屋で壬生寺に…お団子屋に向かったのだった。




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