ゆすらうめ
「狂う歯車」
あれから徒歩で少し歩き進めて、無事に壬生寺に着いた。
「お団子どこだろうね」
「いや知らないし。私はお寺見てくるからっ」
「えっ」
引き止めようと手を伸ばすものの、虚しく空を切る。
…ここまで来て放置されてしまった。
おろおろしながらも、一人でお団子屋さんを探す。
「…あっちかな?」
土を踏んであっちこっちと彷徨う。
が、一向に見当たらない。むしろ離れている気さえする。
きゅう…
「…お腹空いたかも……」
空腹を知らせる音が二、三度鳴るのが、やけに大きく聞こえる気がした。
しかし、幸か不幸か、人っ子一人いない。
何時の間にか壬生寺の木々の多い奥に来ていたようだ。
…というか。よく考えたら、今日は朝寝坊して朝食を抜いた上に、現時刻は昼を過ぎた16時前じゃん。
「…やば」
空腹と疲労からか、突然の目眩に襲われた。
───ぐらりと揺れる視界。
周りに人の気配はない。
「……っ」
ここで倒れたら、また藤香に心配かけちゃうなぁ。
でももう、だめ…お腹空き過ぎて…体力も……
バランスを保てなくなった瞬間。
…ほのかに甘酸っぱい香りを纏った、一迅の優しい風が通り抜けた。