恋をした悪魔
リリスには、水の妖精の怒りの意味が分かりません。
「人間なんて、どれも一緒よ。みんな愚か」
「一緒なんかじゃない。彼は特別なんだ」
気づいてないのか、と水の妖精はリリスに詰め寄りました。
「彼はやさしい。汚れを知らない。
行き倒れた見知らぬ女を、見返りもなく助けてる。
自分はお腹を空かせていても、家の物をお金に換えて、
毎日遠くの町まで高価なミルクを買いに行く。
彼の心は清く尊い、まるでこの湖のように」
水の妖精は、まっすぐに湖を指さします。
すると、湖の上にみるみる水の鏡が現れて、
湖底に沈む闇色のナイフを映し出しました。
返して、と手を伸ばすリリスを、
水の妖精は清らかなオーラを放って牽制します。
「絵を描くのが大好きな彼。
彼の絵は、彼の心のように美しい。
私は彼を愛してる。ナイフは絶対に返さない」
瞬間、水の鏡が砕け散り、破片がリリスに降り注ぎました。