恋をした悪魔
さまよい歩いて、夜明け前。
リリスは自分のもとへ駆け寄ってくる影を見つけました。
「ああ、やっと見つけた!」
影の正体は、息を切らした青年でした。
「謝るよ、僕が悪かった。だから一緒に……」
情けなく下がった眉尻は、しかしリリスの姿を認めたとたん
大きく跳ね上がりました。
驚きに見開かれた青年の瞳に映るのは
右半面を醜くただれさせた女の顔でした。

毒草の盾もむなしく、水の鏡の破片によって
まっさらな白い頬は容赦なく傷つけられていたのです。
リリスは混乱しました。
己の美しさをこそ存在意義とし、誇っているリリスです。
おぞましく崩れた顔など受け入れられるはずがありません。
「見ないで!」
叫び、顔を手で覆い、リリスはうずくまりました。
傷つき、打ちひしがれた未完成の体(いれもの)は
もはや逃げ出すことさえできないほど弱りきっていたのです。