恋をした悪魔
「君は危なっかしいから
これからは僕に見張られていてもらうよ」
とある昼下がり、なかば真剣に、なかばおどけたように
青年がリリスの手を引きました。
やってきたのは離れの小屋、青年のアトリエでした。
小さな空間いっぱいに飾られた絵は、どれもこの森の風景で
色彩は生命力に満ち、風や匂いすら感じられそうです。
「彼の絵は、彼の心のように美しい」
リリスは水の妖精の言葉を思い出しました。

――ただ色のついた油を塗りつけてあるだけなのに。
不思議に眺めているリリスに、青年は恥ずかしげに言いました。
「見ての通りの腕だから、あまり売れないんだけどね」
もともと芸術に価値を置かない悪魔には
画家の腕の良し悪しなどどうでもいいことです。
「絵は絵で、お金はお金。
両方、どちらかになり変わることなんてできないわ」
そう呟いて、なお絵を眺めるリリスを、
青年はいたく感じ入った表情で見つめました。