恋をした悪魔
翌日、リリスは抵抗することなくキャンバスの前に座りました。
その手には昨日もらった絵が握られています。
言葉などなくても、青年にはそれが何よりの賛辞でした。
その日リリスをモデルに描いた絵には
今までにない高値がつきました。
「ありがとう。君のおかげだよ」
青年は、両手いっぱいのミルクを持って帰って来ました。
「こんなに1人で飲めないわ」
驚くリリスを見て、青年は声をあげて笑いました。
青年は、リリスを描きました。
リリスは、青年と、青年の描く自分を眺めていました。
家には、少しずつ物が増えていきました。
青年は、よく笑いました。
リリスは、それを自然だと感じるようになっていました。
胸のもやもやは、気にならないほど小さくなりました。
知らぬうちに傷は、すっかり消え去っていました。
2人の間を、たくさんの毎日が流れていきました。
そしてリリスは、大切なことを忘れていました。