恋をした悪魔

しとしと、しとしと。

清浄な湖も、悲しい雨に染まりました。

胸を痛めた水の妖精は、雫のカーテンを撫でながら

青年の家へとやって来ました。

そして、空っぽになってしまった青年に、そっと囁きました。

「どうか悲しまないで。

その七色にきらめく石を、庭に埋めてごらん。

芽が出て、葉が茂り、花が咲いて、実った果実はあなたを生かす。

あの子はあなたの傍にいる」


青年は、不思議な声に導かれるまま、石を庭に埋めました。

リリスのいない、何も見えない世界で、その声だけが

たったひとつの光のように思えたのです。

七色にきらめいていたというリリスの残した石は、

かつてのこの瞳に、どんなふうに映ったのだろう。

視界を閉ざされてしまった青年が、そう思いを巡らせては

底の尽きない涙を流し、心をいっそう枯らしている間に、

庭に緑が芽生え、ぐんぐんと成長して、木になりました。

木はすぐに花を咲かせ、小さな実をつけました。

< 31 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop