恋をした悪魔
それから、リリスは次々と、男を殺していきました。
人間とは、男とは、なんと愚かなのでしょう。
若者も、老人も、独り者も、妻を持つ者も
リリスを拒む者は1人としていません。
皆、欲におぼれ、命を落としていきます。
気づけば、魔王の命令の5人まで、あと1人。
このまま街を歩いていれば、すぐに為し遂げられるでしょう。
つまらなくなったリリスは人間の姿を解き、
気まぐれに動物をたぶらかそうと森へ向かいました。
ところが、そこは非常にのどかな森でした。
獰猛な動物の精気を求めて行けども
ちらりともその気配を感じることができません。
さまよっていると、木々がぽっかりと開けた場所に出て
リリスは自分の大きな失敗に気づきました。
そこは、清浄な湖のほとりだったのです。
邪気そのものである悪魔にとって、清浄さは存在を脅かすもの。
あわてて逃げようとしましたが湖の力は思いのほか強く
リリスは清らかな気にあてられ、動けなくなってしまいました。