臆病な初恋。
それからまた沈黙が続いた。
亜清のコーヒーカップを見ると、カラになっていた。
もう帰るんだろうな。
そう思うと寂しくなる。
きっと、亜清が今帰ったら、今日の事はなかった事になる。
今までのように、会っても冷たい目で私を見て、無視をするのだろう。
だったら、もう少しだけ喋りたかった。
今日の事が〝白紙〟になってしまうのなら。
〝他人〟に戻ってしまうのなら。
「おまえ、なんで食わねーの?」
「え?」
「一つも食ってねえじゃん」
「なんか、ぼーっとしちゃって」
「そっか」
何本目かの煙草に火をつける。
私は煙を見ながら、きっとこれを吸い終わったら帰ってしまうのだろうなと考えて、余計に喋らなかった事を後悔する。
私はいつも勇気がなくて、臆病だ。
亜清が煙草を揉み消す。
いよいよ、さよならの時間が来たんだ。
……他人に戻ってしまう時間が。