百物語

┣6本目 猫憑き 其のニ

実際に私が経験した話なんですけど…


私は猫が大好きで大好きで飼ってた猫の他によく近くの野良ちゃんにも餌をやってたんです。


でも私みたいに猫が好きな人ばかりじゃない。


あの日いつものように餌をあげていたら知らないおじさんがつかつかやってきて「汚い猫に餌なんてやるな!フンをされたらたまったもんじゃない!」と怒鳴られました。


この時点で私の心臓は止まりそうだったし怖かったしでフリーズしてしまいました。


確かに私はボランティア程はしてませんし、おじさんの言う通りフンをされれば嫌だと感じる人も多いと思います。私も勝手に餌をあげてフンの処理などもしてませんでしたので申し訳ない気持ちと汚いというのは…とか、この子も好きで野良してる訳じゃないのに…とかそういう気持ちが混ざり合って複雑な気分になったのを覚えてます。


おじさんはかなり興奮してました。私しか居ないのと、このままここにいるとこの子達もと思って「すみません」ととりあえず本音は飲み込んで謝って立ち去ろうとした時でした。


「…汚いんだよ!あっち行け!!」と、叫ぶのと同時に野良ちゃんの鳴き声が耳を劈きました。


見てみると野良ちゃんは何が液体の様なもの…思い返すと多分熱々の珈琲か何かをかけられたようでもがき苦しんでました。


驚きのあまりおじさんを見ると凄い形相でこちらを見たので恐怖のあまり私はその場から逃げ出してしまいました。


こういう人は何をするか分からないのでこのままでは私の身にも…と思うと野良ちゃんのことが気がかりではあったのですが身体が勝手に動いてました。


少し経ってから勢いで逃げて来たけどあの野良ちゃんが心配になった私は再びあの現場に戻りました。

…正直戻らなければ良かったと後悔してました。確かに野良ちゃんは居ました。…首だけになってましたが。


あの人はここまでするのかと思うと再び恐怖が私の体の中を駆け巡りました。


…その後のことはあまり覚えていませんが、恐怖で腰が抜けた私を通行人が見つけてくれ、その近くに猫の首が転がっていたので警察に連絡してくださりました。警察に事情を聞かれた私ですが放心状態でなんと答えたかは覚えてませんが「暫くこの辺りの見回りを強化する」という言葉だけは覚えてます。


数日間はショックと恐怖で家から出られませんでしたが幸いのことに理解のある会社で有給を頂いて休みました。


漸く気持ちに整理がついて出勤するために歩いていた時でした。


ーーギャアアァァ!!


凄い悲鳴で体がビクリの跳ね上がると声がする方に顔を向けました。救急車と人だかりが出来ていたのですぐ見つけられました
。声の方を見て…私に戦慄が走りました。


…あのおじさんでした。担架に乗せられて頭を激しく掻きむしりながら悶え苦しんでます。


おじさんは耳を塞ぎたくなる様な叫び声をあげて病院へ連れて行かれました。


風の噂によるとおじさんは未だに変わらず頭を掻きむしっている様です



その姿はあの時に何かされた野良ちゃんと同じでした。


私のお話は以上です。


――フッ シュポ
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