太陽と雪
「お嬢様、そろそろ、時間でございますよ」

「そうね。

だけど、その前にお手洗い行ってくるわ。

こっちまで緊張してきた。
まったく、心臓に悪いわ」

「かしこまりました。
行ってらっしゃいませ、彩お嬢様」


もう……

このコンテスト、早く終わってくれないかしら。

済ませた後に、少しだけ化粧を直してから、矢
吹の元に向かおうとした。

すると、私から死角になる壁に寄りかかるように立っている人物がいた。

城竜二美崎だ。


「あら、いたのね。
何?

貴女……どんな教育したのよ。

あの獣医師、随分と自信たっぷりだったじゃないの」


「そう易々と教えるワケないでしょ?

城竜二 美崎」

「そうよね。

どんなにレベルを上げたところで、私には勝てないんだから」


それだけを言って、美崎はハイヒールの音を響かせながら去っていった。


私も急いで、観客席に戻る。


「彩お嬢様。

城竜二 美崎と、どのようなお話を?」

「何よ、貴方、偵察してたの?」

「当然でございます。
彩お嬢様に何かあってはいけませんから」

「分かったわよ」

美崎。

昔の貴女は、高飛車ではあったけど、他人への、とりわけ親友への思いやりは持っていた。

常に人を見下すような、先程のような物言いはをするような子ではなかった。

一体何が、貴女をそんなに変えてしまったの?

昔の美崎に戻したい。

慣れない氷の仮面を被ったような貴女のそれを、外すことが出来るなら。
私は何でもする。

ムダに声の大きい司会の声で、コンテストが始まった。

最初は、診察&トリミングだ。

診察に使った犬を、トリミングしなければならない。

奈留ちゃんはビーグルをセレクトしていた。


「マズイな……

奈留が選んだあのビーグル、フィラリアに感染している。

奈留は多分気付いているだろう」

えっ?
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