太陽と雪
「椎菜……?」

「ちゃんと……好きって言ってよ、麗眞。

じゃなきゃ私、わかんない……」

しばらく椎菜を見ない間に。

ずいぶん、可愛い感情表現をしてくれるようになったのな。

そこがまた。
愛おしくてたまんねーんだけど。


「好きだよ?

大好きだ、椎菜。

もう、俺からは離さないから。

椎菜から離してって言っても、絶対離してやらないからな。

ごめんな?

椎菜。

いろいろ忙しかっただろうに、椎菜なりに時間作って、はるばるカナダまで俺に会いに来てくれたのに。

何も言わずに来たことにも、腹が立って。

あのときは、宝月家の次期当主としての勉強もしていた時期で。

全ては椎菜を最高級に幸せなフィアンセにしてやるための準備の時期だったの。

その椎菜にいきなり何も言わずに顔見せられたもんだから、混乱して。

ごめん。
もしタイムマシンに今乗れたら、あのときの自分に1発どころか気の済むまでグーパンチ入れてやりたいくらいだ」


一呼吸おいて、さりげなく、椎菜の弾力のある頬に唇を落とす。


「んっ……」

柔らかい唇から漏れる色っぽい、高い声。

それは、先ほどお手洗いで落ち着かせた俺の下半身を、また興奮状態にさせるには十分すぎるくらいだった。

やべ……

まだ、頬にキスをしただけだ。

あのテーマパーク内のホテルでは、出来ずに未遂で終わったことだ。

それをしただけで、簡単に雄のスイッチが入れられた。

1度スイッチが入ってしまったものはもう仕方がない。

あとはどうにでもなれ。


柄にもなく、手がじんわりと汗ばんできたが、そっと椎菜の身体を引き寄せて、彼女の柔らかい唇に、そっと自らの唇を近づけた。

キスまであと数ミリだったが、か細い声がそれを止めた。

「ね、麗眞……

これ以上…今は止めて?

これより先を望んじゃうでしょ?」


「あの時以来、そんなこと……したことないんだから……

高校生の頃は放課後に何度も、麗眞の広い部屋の一室でこういうこと、していたけど。

まだ、完全に治ってないから。

昔みたいに、ちゃんと、しかるべき場所でしたいの、そういうことは。

ヨリ戻してからの最初だもん、大事にしたい」


椎菜のその純粋すぎる言葉に、思わず笑みが零れる。

そっと椎菜の耳元に、顔を寄せて囁く。

ピアスは外されていて、ピアスホールがよく見える距離だ。

「俺も。

こんな、誰が見ているか分からない病院のベッドじゃなくて。

ちゃんと、宝月の屋敷の。

防音効果がしっかりされている部屋で。

心ゆくまで、何年かぶりに椎菜の可愛い鳴き声聞きたい。

色気ある下着姿も、しっかり目に焼きつけたいんだ。

いいよね?
椎菜」

既に、俺の脳内では、そのしかるべきことはしっかり妄想されている。

その証拠に、下半身は興奮状態のままだ。


「バカ!

そんな恥ずかしい台詞、耳元で、
しかも色っぽい声で言わないで!

想像しちゃうでしょ、もう!」

「ん?

何を想像するって?

言ってみ?
椎菜」

椎菜は、俺のズボンの真ん中をしばらく穴があくほど見つめた後、顔を一瞬で真っ赤にした。

俺は、椎菜の背中に回す腕の力を強めて、椎菜に身体を、とりわけ下半身を強く密着させた。

一瞬。
椎菜の身体がビクッと震えた。

「分かってくれた?

椎菜。

椎菜のこと考えると、大体こうなるって」


椎菜は、更に顔を真っ赤にして、小さく首を縦に振った。

ホント、可愛すぎる。

罪な女だ。

どこまで俺を欲情させれば気が済むんだ。

「わーい!

治ったら、ちゃんと、麗眞の広いお家に呼んでほしいな……

約束だよ?」

か細いがソプラノトーンの高い声で、俺の耳元に顔を寄せてそう言う椎菜。

「俺を誰だと思ってる?

約束は、ちゃんと守る男だよ?

俺、昔からそうだったでしょ」

少し考えて。

「こうすれば、満足?
約束の証」

今度こそ、だ。

椎菜の弾力ある唇に、そっと口づけた。

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