太陽と雪

作戦決行

伊達さんの後に続いて、会議室へと足を踏み入れる。

プロジェクターやモニターまできっちりと完備してある。

楕円形に配置されたテーブルに、椅子はかなりふかふかで、座り心地もいいとみえる。

さらに、宝月家の部屋の一室と同じように、防音の作りになっているらしい。


「すげ……」

そんな陳腐な台詞しか出てこなかった。

俺が周りを見渡すと、親父の幼なじみの華恵さんと、華恵さんの夫である優作さんの姿もあった。

二人とも裁判が終わってそのまま来たらしく、スーツ姿だった。

親父と親しげに話し込んでいる辺り、会うのは久しぶりなのだろうか。


「あれ?麗眞くん?

久しぶり。

しばらく顔見ない間に、大人っぽくなったなぁ。

やっぱり、蓮太郎に似てるね。

礼儀正しいところとか」


そう話しかけてくれた優作さんに、ペコリと頭を下げた。


「椎菜ちゃんも、久しぶり。

麗眞くんがお父さん似なら、椎菜ちゃんはお母さん似だね。

すぐお母さんに似てスタイルいいし、ちょっと天然で純粋なとことかそっくり。

そうそう。
最近、貴女の両親に会っていないわ。

何とか都合をつけて結婚式には出たいの。

日取りが決まったら教えてちょうだいね?

何とか休みをもぎ取るわ」

優作さんにも華恵さんにもそう言われて、椎菜は顔をほんのり赤くしながら俯いていた。

そういう反応が、可愛いんだよな。
……苛めたくなる。

「おい、主役の麗眞くんと椎菜ちゃんもいつまでも話してないで、俺に注目!」

伊達さんに注意されてしまった。
チッ…
普段はあんまり人から注意されないんだけどな、俺。

「早速だが、今から、作戦を伝える。
まずは、この作戦の趣旨を美崎ちゃんから説明してもらう」

そう言って、美崎さんが俺たちの前に現れる。

相沢だけは、一瞬目を丸くした後、じっと彼女を見つめていた。

一応、相沢の想い人だもんな、美崎さん。

美崎さんが話してくれたことは2つ。

それは、椎菜の両親が特殊なクスリによって性格を変えられたあの日から、美崎さんは情報監視センターの一員となったこと。

椎菜を救出するどさくさに紛れて、椎菜の自宅に仕掛けた盗音機を通して、椎菜の両親の様子を観察していたこと。

そこから分かったことは、1日の内に何回か、クスリの効果が途切れる時間があるということだった。

麻薬ほどではないにしろ、依存性があるというそのクスリ。

最初の内は他人に与えられるが、そのうちに自分から欲するようになるらしい。

そこで、そのクスリの効果が切れる時を狙って彼らを元に戻そう、ということであるようだ。

美崎さんからの説明を終えると、次は伊達さんから説明があった。


「そして、だ。
彼女たちを元の穏やかで優しい両親に戻すには、これが必要となる」

そう言って、伊達さんが掲げたのは、先ほど渡された3つのブローチだった。

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