太陽と雪
「子供扱いしないでほしいわ。
私はもう、30歳よ!
立派な大人よ!
まぁ、ファスナー上げてくれたのが麗眞じゃなくて矢吹で良かったけど!
もうお風呂入ったし、寝るから!
おやすみ!」
「いけません、彩お嬢様。
髪がまだ濡れておりますゆえ……
風邪をひきます」
「そこまで言うなら……
矢吹?
貴方が乾かしてくれるのよね?
私の執事でしょ?」
「お嬢様のためなら……なんなりと」
そう言って、すぐドライヤーの用意にかかる矢吹。
その横顔は少し……いや、かなり赤い。
「照れているのかしら?
私、貴方に何か言ったかしら」
「いいえ、お嬢様。
私がお嬢さまを女性として意識しすぎているせいでございます。
未熟ゆえ、申し訳ございません。
しばしお待ちを」
ちょっと困り顔の矢吹を横目で見て、密かに機嫌を直した。
どうやら、私はちゃんと彼の執事に「女性」だと認識されているようだった。
よかった……。
「お嬢様、どうぞ。
こちらへお座りくださいませ」
そう言って、椅子を指し示す矢吹の元へ。
宝月の屋敷にいるときもそうだったのだけれど、矢吹は髪のセットがとにかく上手い。
あとメイクも、服の着付けも。
「矢吹っ……貴方……わざとやってる?
くすぐったいわよ。
ひゃっ……」
首筋に矢吹の男らしい手が当たって、ついお嬢様らしからぬ声が出てしまう。
なにこの声。
とっても破廉恥!
自分じゃないみたい。
「彩お嬢様……
弱いのですね……首筋」
突然、耳元で囁かれて、顔が一瞬で熱くなった。
決して、ドライヤーの温風のせいではない。
矢吹。
やめなさいよ、耳元でいきなり!
弱点は弱点だけど……
吐息が色っぽくて、変な気を起こしそうになる。
髪を乾かし終えると、服に付いた髪の毛を払ってくれた。
だけど……
それはいいんだけど……
「ちょっ…矢吹……」
さりげなく胸元触るんじゃないわよ!
お風呂あがりで下着を付けてないってこと……バレちゃうじゃない。
「お嬢様!?
どうかじっとなさいますよう……」
「よく言うわよ……
仕えてる主の胸、さりげなく触ってたくせに」
「お嬢様、誤解でございますよ……。
お嬢さまの許可なく、お嬢さま自身の身体に触れるほど、私は不埒な人間ではございません。
確かに、鎖骨辺りは手を使いましたが、生地を傷めますゆえ、服の辺りはタオルを使用致しました」
あら、ホントに?
気のせいだったのかしら。
「申し訳ないわね。
触ってないのなら、いいのよ」
「いいえ、私こそ。
誤解を招くような行動をしてしまい、失礼いたしました」
ちょっと残念だった。
矢吹になら。
少しくらい触られても……よかったのに。
……どうしたのよ、宝月 彩!
何で私……
執事が少し場を離れただけでこんなことを思うんだろう。
私、本当に矢吹のこと……男の人として好き……なの?
私が藤原以外の執事を好きだなんて……
絶対、あり得ない。
私はもう、30歳よ!
立派な大人よ!
まぁ、ファスナー上げてくれたのが麗眞じゃなくて矢吹で良かったけど!
もうお風呂入ったし、寝るから!
おやすみ!」
「いけません、彩お嬢様。
髪がまだ濡れておりますゆえ……
風邪をひきます」
「そこまで言うなら……
矢吹?
貴方が乾かしてくれるのよね?
私の執事でしょ?」
「お嬢様のためなら……なんなりと」
そう言って、すぐドライヤーの用意にかかる矢吹。
その横顔は少し……いや、かなり赤い。
「照れているのかしら?
私、貴方に何か言ったかしら」
「いいえ、お嬢様。
私がお嬢さまを女性として意識しすぎているせいでございます。
未熟ゆえ、申し訳ございません。
しばしお待ちを」
ちょっと困り顔の矢吹を横目で見て、密かに機嫌を直した。
どうやら、私はちゃんと彼の執事に「女性」だと認識されているようだった。
よかった……。
「お嬢様、どうぞ。
こちらへお座りくださいませ」
そう言って、椅子を指し示す矢吹の元へ。
宝月の屋敷にいるときもそうだったのだけれど、矢吹は髪のセットがとにかく上手い。
あとメイクも、服の着付けも。
「矢吹っ……貴方……わざとやってる?
くすぐったいわよ。
ひゃっ……」
首筋に矢吹の男らしい手が当たって、ついお嬢様らしからぬ声が出てしまう。
なにこの声。
とっても破廉恥!
自分じゃないみたい。
「彩お嬢様……
弱いのですね……首筋」
突然、耳元で囁かれて、顔が一瞬で熱くなった。
決して、ドライヤーの温風のせいではない。
矢吹。
やめなさいよ、耳元でいきなり!
弱点は弱点だけど……
吐息が色っぽくて、変な気を起こしそうになる。
髪を乾かし終えると、服に付いた髪の毛を払ってくれた。
だけど……
それはいいんだけど……
「ちょっ…矢吹……」
さりげなく胸元触るんじゃないわよ!
お風呂あがりで下着を付けてないってこと……バレちゃうじゃない。
「お嬢様!?
どうかじっとなさいますよう……」
「よく言うわよ……
仕えてる主の胸、さりげなく触ってたくせに」
「お嬢様、誤解でございますよ……。
お嬢さまの許可なく、お嬢さま自身の身体に触れるほど、私は不埒な人間ではございません。
確かに、鎖骨辺りは手を使いましたが、生地を傷めますゆえ、服の辺りはタオルを使用致しました」
あら、ホントに?
気のせいだったのかしら。
「申し訳ないわね。
触ってないのなら、いいのよ」
「いいえ、私こそ。
誤解を招くような行動をしてしまい、失礼いたしました」
ちょっと残念だった。
矢吹になら。
少しくらい触られても……よかったのに。
……どうしたのよ、宝月 彩!
何で私……
執事が少し場を離れただけでこんなことを思うんだろう。
私、本当に矢吹のこと……男の人として好き……なの?
私が藤原以外の執事を好きだなんて……
絶対、あり得ない。