十三日間
おっさんは、どっちを選んだのだろう。

俺は、他に考える気力もなくなり、そんな事をぼんやりと考えた。

興奮気味の隣のじぃさんが、俺に話しかけてくる。
「最期にあそこまで暴れて、ケガまでする奴は、滅多にいないらしいんだがな。よっぽどの臆病者だな」
気丈を装ってそう言ったじぃさんだったが、いつもより甲高い声が、少し震えていた。

俺より先に、あの道を歩く予定のじぃさんには、自分の未来を実感する出来事だったのだろう。
俺ですら、多少動揺しているのだ。
日が差し迫っているじぃさんには、もっと身に染みて、堪えているのだろう。

普段だったら軽くあしらうか、無視するかのどちらかなのだが、じぃさんが少し不憫になった俺は、今日は、少しだけじぃさんの話に付き合ってやることにした。
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