十三日間
しばらくすると、あたりが騒がしくなってきた。
横になっていたものの、別に眠っていたわけではなかった俺は、すぐに身体を起こした。
おっさんが連れて行かれた方から、何人もの話声がする。
扉の近くまで歩いていき、何か見えないか、覗く努力をしてみる。
話し声はだんだんと大きくなってきた。
こちらにやって来るらしい。

「まったく、何で今日に限って、カギが壊れたりするんだ!」
「知るものか! そっち、ちゃんと持てよ」
「ったく重いな、こいつ」

そんな看守たちの話し声が俺の部屋の前に差し掛かった。

何人かがかりで、ビニール素材の袋を運んでいる。
中身はかなり重そうだ。

細長い大きさ。
人一人分くらいの。

…あぁ、隣のおっさんだ……。

俺は気付いた。

かつて、おっさんだったものを、運んでいるんだ。

慌ただしく、看守たちは俺の部屋の前を通り過ぎていった。

話し声が遠ざかっていく。

「裏の出口からなら、いつも通り台車でさっさと運べるのに」
「しょうがないだろう、台車も裏の出口に置いてあったんだ、ちゃんと持てよ、そっち」
「重てぇなぁ」

やがて、聞こえなくなった。
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