。*雨色恋愛【短編集】*。(完)

ターゲットは渡辺皐月

「渡辺さん」

「儚くん…」

「俺、話あるんだ」

「あたしに?」

「うん」

誰もいない音楽室。

俺とターゲットは、二人きり。

「…なに?」

「…佐々木さんのこと、辛いよね」

「…うん」

「今、渡辺さん、すごく辛いと思う。だから

、俺でよければ、頼ってくれないかな?」

「えっ…」

「俺、渡辺さんを支えるよ」

「…そんなっ!!好意がないなら、そういうこ

と言わないでよ!!」

「俺…嫌いなんて言ってないよ」

「えっ…」

「嫌いだなんて、言ってないじゃん」

だって俺。

お前のこと、死んでほしいくらい大嫌いだも

ん。

って…

なに俺は、小学生みたいな言い訳してんだ。

「…ほんとに?」

「ほんとに」

お前が大嫌いだよ。

「儚くんっ…」

泣きながら抱きついてきた。

可愛くねぇよ。

俺に抱きついていいのは、結愛だけなんだよ



渡辺を離す。

「…俺との関係、秘密にしてね?」

「わかった」




俺と渡辺は、まわりに秘密の疑似恋愛を続け

た。

そして、渡辺皐月も…

俺と付き合って1ヶ月後、死亡した。


「自殺するなんて…バカだな」


「こんな俺でも、まだ好きか?結愛…」


俺は、大好きだよ。
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