。*雨色恋愛【短編集】*。(完)
「あ~、疲れた」

家にも帰りにくいあたしは、放課後、結構遅

くまで勉強をしていた。

「勉強、終わった?」

…誰かの声がします。

あたしの近くには…誰もいません。

ここは、旧館の図書室だし…

誰かいるはずなんて、ないのに…

「秋山奏歌ちゃん?」

あたしの名前…呼んでる。

どこ!?

「本棚のところ」

言われた通り、そっちに向かう。

「あっ…」

やっと、人発見。

「俺、尚斗≪なおと≫。奏歌ちゃん…?で、

あってるよね?」

「あ…はい」

「俺、1年の特進クラスにいるんだけど、知

ってる?てか、名前聞けば…」

「じゃあ…フルネーム教えてください」

「明屋≪はるや≫尚斗。知らない?」

明屋尚斗…明屋尚斗…

「あぁ!!」

いつも成績、1位の人だ!!

「良かった。知っててくれて」

「知ってるよ!!毎回、1位だもんね~」

「思い出すまでに、時間かかったみたいだけ

どね」

「あたし、覚えるの苦手なの。でも、みんな

名前言えば、わかってくれるの?」

「ううん。顔見ればわかってくれるよ。それ

より、覚えるのが苦手な奏歌ちゃんに、覚え

てもらえてて、嬉しい」

「…本当に、ごめんなさい。有名な人…なん

だよね?ごめんなさい」

「謝んないでよ~。奏歌ちゃん」

「あの~」

「ん?」

ずっと気になってた。

「なんで、あたしの名前…知ってるの?」

「あ~、秘密。ちなみに、俺も最近ね、よく

ここにいたんだよ。死角のとこにいて、奏歌

ちゃんに気づかれなかった」

「えっ…嘘」

泣いてたのも…見られちゃった?

「ごめんね…見ちゃった。だから、声かけら

れなくってさ。で、最近元気で、今日なんて

すごく集中してたから。声かけてみようと思

って」

「…ごめんね。心配…かけちゃった?」

「うん。けど、今日元気な姿見られたから、

許す」

「…ありがと」

「今、部活停止中?」

「……うん」

「じゃあ、今日から部活復活まで、部活終了

時間まで一緒に…勉強しない?」

ちょっと赤い顔で、あたしを勉強に誘ってく

れた。

< 202 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop