接吻ーkissー
特に意味は考えなかった。

その言葉にどんな意味が含まれているかなんて、もちろん知らなかった。

「うん、好きだよ」

だから、首を縦に振ってうなずいて答えた。

答えたとたん、由良の顔が私に向かって近づいてきた。

えっ…?

そう思った時には、もう手遅れだった。

一瞬だけ…ほんの一瞬だけ、私の唇にぬくもりが触れた。

同時に、由良の慈しむような瞳とぶつかる。

「――由、良…?」

今、私に何をしたの…?

「好きだよ」

由良がそう言って、私に優しく微笑んだ。
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