接吻ーkissー
「近所に住んでた姉ちゃんがきっかけだったかな」

菊地さんがそう言ったので、
「…それは、どう言ったもので?」

私は聞いた。

「俺と8つ違いの女の子でさ、仲が良かったの。

彼女はピアノを習ってて、俺が彼女ン家に遊びに行くたびにいつも弾いてた。

俺も見よう見まねで何となく弾いたって言うのが、そもそものきっかけだったかな」

彼女――近所に住んでいる女の子だったとは言え、ちょっと嫉妬してしまった。

「それで彼女にピアノを習ってもらって、彼女の親の勧めで街中のピアノ教室に通った。

悲しいけれど、幼少時は友達と遊んでいたって言う思い出よりも、1人でピアノばっかろ弾いていたって言う思い出しかねーな」

そう言った菊地さんに、
「それはそれで、いいことのような気もします」

私は言った。
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