接吻ーkissー
「――ふあっ…」

唇が離れた瞬間にこぼれ落ちたのは、熱っぽい吐息だった。

お互いの唇の間には、銀色の糸がひいていた。

ぼんやりとその糸を眺めていたら、
「――こりゃ、もう無理だ」

フワリと、躰が浮いた。

いや、浮いたんじゃない。

菊地さんが私を抱えあげたんだ。

これ、どう考えてもお姫様抱っこだよね…?

憧れていたことは憧れていたけど、いざやられると…やっぱり、恥ずかしい。

「逃げるなら、今のうちだぞ?

俺を突き飛ばして逃げるなり、警察に通報するなり、何なりとすればいい」

そう言っている菊地さんの足が向かっている先は…あの部屋って、寝室だったよね?
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