今宵は天使と輪舞曲を。
ラファエルの言葉に胸が震える。鼓動が大きく高鳴り、思うように呼吸ができない。
しかしそれはメレディスだけではなかった。レディー・ブラフマンもメレディス同様に息を詰まらせていた。けれども彼女はメレディスの心情とは明らかに違う。彼女の表情は明らかに怪訝そうだ。眉間に深い皺が刻まれているのを見た。
結局、自分は誰からも歓迎されていない存在なのだ。彼女の態度だけでも自分の立場をまざまざと思い知らされる。
「貴方! それはだめよ」
彼女は空かさず声を上げた。
それはそうだろう。だって自分は淑女としての教養を学んでいないばかりか、このまま金遣いの荒い叔母たちの庇護下にいれば、借金まみれの行く末を辿る。メレディスには妻として家庭を切り盛りする才能もなければ夫を支える能力だってない。これといって取り柄もない自分は結婚しても荷物になるばかりの人間だ。
体内の熱はすっかり消え失せている。夜気の冷たさが全身を包み、凍えさせていく……。
目頭が熱い。唇を引き結び、ハンカチで覆う。メレディスは声を上げて泣かないようにするので精一杯だった。
ふたりの会話を盗み聞くんじゃなかった。苦しみで胸が張り裂けそうだ。早くこの場を去りたくてたまらないのに、この会話が終わるまで身動きできないなんて、なんて神様は意地悪なのだろう。
打ちひしがれるメレディスの存在を知らないふたりの残酷な会話は尚も続く。