今宵は天使と輪舞曲を。

 エミリアはいかにも残念そうな表情を繕い頑張っているが、キャロラインには彼女たちが誘いを断るのは目に見えていたようだ。だからだろう、彼女の輝かんばかりのアンバーの目はメレディスを写したまま動かない。叔母たちをはなから相手にしていないキャロラインの態度はメレディスを小気味良くさせてくれる。やはり彼女といるととても心地良い。キャロラインはメレディスがひとりの人間であるということを思い出させてくれる。

 やはり彼女といるととても心地良い。キャロラインはメレディスがひとりの人間であるということを思い出させてくれる。

「ねえ、メレディスはもちろん参加するわよね!」
「ええ、楽しみ」

 メレディスは叔母たちの意見を聞く前に大きく頷いて見せた。
 その彼女に向かってエミリアは不快そうに片方の眉を吊り上げていたが、メレディスは無視を決め込んだ。


 叔母にはとにかく、ブラフマン家の息子二人には近づくなと警告されていたが、末娘やブラフマン伯と親しくなるなとは言われていない。

 それに、いくら身元引受人であったとしても彼女たちは他人。彼女の体も意思もメレディス本人のものだ。メレディス以外に彼女の自由を奪い去ることは誰にもできない。

 ――とはいうものの、エミリアやジョーンの突き刺すような冷たい視線は恐怖を植え込んでくる。

 メレディスは膝の上に置いていた両手を力いっぱい握り締め、これでいいのだと言い聞かせた。





 《招かれざる客人・完》
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