今宵は天使と輪舞曲を。

§ 04***哀愁と愛着と。




 メレディスは昼食を終えると早速部屋に戻り、馬に乗りやすい、裾が広がるドレスに着替えた。昼食前よりも気分はずっといい。おかげで彼女の支度はキャロラインよりもずっと早くに終わっていた。

 馬に乗るのなんて半年ぶりだ。メレディスは馬が好きだった。彼らは人間のような癇癪をすぐに起こさず、温厚で利口な生き物だったからだ。それに動物はいつだって見窄らしいメレディスを蔑んだりしない。何より、彼女の愛馬だったクイーンは叔母から虐げられ続けてふさぎ込んでいるメレディスに寄り添い、励ましてもくれていた。クイーンは今、元気に過ごしているだろうか。


 メレディスはキャロラインと、彼女の父モーリス・ブラフマン伯に連れられて厩舎にやって来た。さすがはブラフマン家だ。煉瓦造りの厩舎は空調用の塔まであり、中は外観と同じく人が住めるくらい大きくて立派なものだった。そして美しい毛並みをした馬たちが揃いに揃っていた。


「馬のことはよくわからないのだけど、わたしはこの子がとても気に入っているの」
 キャロラインは鼻を擦り寄せてくる栗色をしたポニーを撫でながら口を開いた。

「我が家が育てている馬はみんな静かで大人しいのだよ」

「きっとこの子たちはストレスなく育てられているのでしょうね」

 メレディスはにっこり微笑んでみせた。するとモーリスは嬉しそうな笑みを浮かべ、大きく頷いた。彼の表情を見た瞬間、彼もまた無類の馬好きなのだとメレディスは瞬時に理解した。


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