今宵は天使と輪舞曲を。
しなやかな四肢が緑豊かな大地を蹴る。
カインが湖を守るようにして存在する木々を縫い、林を抜けると見えてくるのは一面のオリーブ畑だ。
彼女はうっとりと目を閉じ、まるで駆ける馬のリズムを聞いているようだ。頬をなぞる風に任せる彼女はとても魅力的だった。ラファエルは姿勢を正したまま、腕の中にいるメレディスの息遣いを感じていた。
緑が連なったオリーブ畑を過ぎれば間もなく厩舎が見えてくる。
「素敵……あそこに見えるのが貴方の厩舎なの?」
メレディスの目は大きく見開き、まるで少女のような反応を見せた。
ラファエルは、密着していた体が少し離れると、彼女の体温を求めて引き寄せたくなった。たった数センチだけなのに彼女と離れることが寂しさを感じる。
彼女と出会う前まではずっと一人が楽だと思っていた筈なのに、こうしていると彼女といる自分こそが本当の自分で居られるような気さえした。こんな感情は初めてで、ラファエル自身、驚いていた。
厩舎ではラファエルが手がける中でも選りすぐりの馬たちが揃っている。競馬では一二を争うほどの競合馬ばかりで、ラファエル自身も馬をこよなく愛するひとりだった。
煉瓦造りの二階建ての厩舎では、一階が馬の――二階では御者の宿泊所になっており、彼らは交代制で馬を見ていた。
「今日はどの馬を見せていただけるの?」