今宵は天使と輪舞曲を。

 メレディスは慣れた様子で軽々とカインから下りるとラファエルに尋ねた。

 丁度その時だった。厩舎のドアが開き、ふくよかな女性が出てきた。ラファエルに気がつくとバスケットを手に、にこやかな表情を浮かべてこちらへやって来る。

 彼女の名はラフマ。主に屋敷内の洗濯や主人と従業員たちの食事の用意などをこなしてくれている。父親から領地を譲り受ける前からブラフマン家の使用人として働いてくれている女性で、レニアよりも十歳年が離れていることもあってか、彼女は母親の良き相談相手でもあった。
 また、彼女の夫は腕利きの御者で、日頃馬たちの世話をよく焼いてくれていた。そんな夫婦の間にできた子供は五人となかなかの大家族だ。


「坊ちゃま、スープを作りましたので後でお届けに参りますね――まあ!」

 そこまで言うと、ラフマは見慣れぬ女性の姿に目を向けた。
 彼女は大きな目を何度も瞬き、口を大きく開けている。
 ラフマとはラファエルがまだ成人する前からの付き合いなので彼女が言わんとしていることは手に取るようによくわかった。

 彼女は、女性を――しかもそれなりの身形をしている貴婦人を屋敷に連れて来たことに驚いているのだ。
 たしかに、これまでのラファエルなら女性よりも手がけている事業を成功させることばかりに専念していたので、女性を連れて来るなどあまり考えられなかったことだ。彼女はそのことに驚いているのだ。


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