今宵は天使と輪舞曲を。

 ああ、やはりジョーンにカインがメレディスの馬だと嘘を吹き込んだのはヘルミナだったのだ。
 メレディスは本人の口から事実を知って目を閉じた。

「貴方の為に好きでもない馬丁とも寝たわ!」
 ヘルミナの必死な声に、しかし彼は軽くあしらうばかりだ。
「君が勝手にしたことだ。おれは何時だって君に強要したことは一度もない」
 ヘルミナと対峙しているなのに、彼の手は抵抗するメレディスの胸の頂を刺激し続ける。
「離して!」
「ねぇ、嘘でしょう? 嘘だと言って! じゃなきゃ、わたしがしてきたことの意味はいったい何だったの――?」
 ヘルミナがルイスの腕に縋りつき、訴えかける。しかし彼は彼女が思っている以上に冷淡で醜い人間だった。
 彼は片手を上げて彼女の頬を強くひっぱたいた。思いのほかルイスの力がとても強かった。彼女の体が地面に倒れ込んだ。軽い脳しんとうを起こしているのかもしれない。しばらくそのまま動かなくなっていた。

「女性に乱暴をするの!? それが紳士としての振る舞い?」
 メレディスが声を荒げた。
「しつこく付きまとってきたその女が悪い。だいたい、男と同じくらい横幅がある女のどこに魅力を感じるのか知りたいね。おれが今までずっと君に話した内容の本音はすべて、正反対のことしか思っていなかったよ」

「愛しているって……信じていたのに……」
 ヘルミナがひと言、ぽつりぽつりと吐き出せば――。

「愛? そんなわけがないだろう? 鏡を見たらどうだい? 引っ込み思案で食欲旺盛。食事に連れて行っても人の目なんて気にしないで次から次へと口に放り込むばかり。いったい君のどこを愛せるというのか」


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