今宵は天使と輪舞曲を。

 ルイスはそういうと唾を飲んだ。メレディスの頭頂部から爪先まで舐めるようなじっとりとした視線が気持ち悪い。
 メレディスは思わず両腕を自分の身体に巻きつけた。警戒心から一歩、後退る。しかしそれが仇になった。メレディスの気弱な姿を目にした彼は、持ち前の傲慢さに拍車をかけてしまった。あっという間にメレディスに詰め寄ると、彼は体を拘束した。

「触らないで!」
 なんとか逃げとようと試みるものの、相手は男性で腕の力も強い。抱きしめられるように捕まったので抵抗すらできない。
「随分美しくなったものだな」
 ルイスの指先がメレディスの顎を持ち上げる。メレディスは彼の目が気持ち悪くて逃げるように顔を逸らした。彼はそれさえも気にしていないふうで、メレディスの顎に触れた手は次の行き場を探して両胸に触れた。
 今から自分がどんな目に遭うのかを考えさせられたメレディスは恐怖で息が止まる。それと同時だった。
「ルイス!」
 今まで無言でふたりを見ていたヘルミナが声を上げた。
「メレディスに何をするつもり? わたしを騙したの? 貴方、君が大切だと、一緒になろうと、そう言ったじゃない!」
 金切り声のような叫びでヘルミナは話すが、ルイスは鼻を鳴らして冷たくあしらうばかりだった。

「わ、わたしは……貴方を信じて人攫いを雇ったり、好きでもない馬丁に言い寄ったのよ? 挙げ句の果てには姉さんを使ってラファエル・ブラフマンの命さえ奪おうと――」


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