今宵は天使と輪舞曲を。

§ 03***悲愴。




 ラファエルは雇った探偵と、町外れにあるパブに来ていた。

 今日は会合があり、両親とキャロラインは留守にしているし兄のグランは鉄道の拡大化という外せない取引のため、メレディスひとりが屋敷に残っている状態だった。――にも関わらず、彼がこうして町外れにやって来た理由はヘルミナが大きく動き、彼女と逢瀬を交わしていた相手の尻尾がようやく掴めたという情報が探偵の口から聞いたことにあった。

 自分と結婚するまでにはメレディスを恐怖から解放してやりたい。その一心でラファエルはメレディスに十分注意を呼びかけ、ブラフマン邸を出てきたのだった。

 ――昨夜のことだ。探偵がヘルミナを着けてやって来たのがこの宿つきのパブだったらしい。驚くべき事に、店主からの話では、あろうことか、彼女の逢瀬の相手はルイス・ピッチャーだと言う。それも二人の逢瀬は一度や二度ではないと話してくれた。

 どうやらメレディスを陥れようとしていた犯人はルイスだったようだ。たしかに、彼はラファエルと出会う前からメレディスを付け狙っていたようだった。すべてはメレディスを手に入れるために仕組んだものだったとすれば合点がいくものも多い。
 自分ひとりではブラフマン家に近づくことができないから、メレディスの義姉ヘルミナを使って事件を起こしていたのだろう。

 店主から一通り話を聞いたふたりは店を出た。すると前方からふいに突風が吹いてきて、そうかと思えば、目線の少し先で長身の男性が口を開閉させ、何やら自分に語りかけるような仕草を示した。


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