今宵は天使と輪舞曲を。
「ぼくは彼女の夫だ!」
ルイスは警官に引き摺られながら去って行く。
「おい、見ろよ。女性に手を上げられて挙げ句の果てには警官に引き摺られてやがる! メレディス、最高な花嫁だよ君は!」
最初に声を上げたのはグランだった。モーリスも続けて笑う。彼らの陽気な笑い声が不穏な空気を取り除いていく。
「家令よ、彼らを都市部まで送り届けてくれ」
モーリスはひとしきり笑い終えると、馬車に戻り、家令に指示を送る。
「かしこまりました、ご主人様」
「ブラフマン伯、ご協力に感謝いたします」
警官がルイスを力尽くで乗り込ませると、モーリスとレニア夫妻に一礼してから馬車は直ちに発車した。
「ほんと、男性を張り倒しちゃうなんてメレディス、貴女は最高ね!」
馬車が去るとほぼ同時にキャロラインがメレディスを抱きしめる。首に顔を埋める彼女の頬に涙が伝っているのをメレディスは感じ取った。
「無事で良かった……貴女が目覚めてくれて本当に嬉しいわ」
キャロラインの揺れる声音に、メレディスも心から助かった喜びを噛みしめた。
キャロラインの優しい言葉がメレディスの心を包み込んでくれる。
「ありがとう」
メレディスもまた、キャロラインに感謝し、彼女の腰に手を回した。
「メレディス、本当に良かった、目が覚めたのですね」
「お義母さま……」
キャロラインに続いて手を伸ばしたのはレニア・ブラフマンだ。メレディスとレニアは互いに抱きしめ合った。
「後生ですから、もう何も告げずにひとりで行かないでちょうだいよ?」
グリーンの目は僅かに潤み、新緑のようなとても優しい、柔らかな目をしていた。