今宵は天使と輪舞曲を。
メレディスたちの目と鼻の先で馬車が停まる。
「こっちよ、早く彼を捕まえてちょうだい!」
レニアは声を張り上げ、連れてきた警官を馬車から引き摺り下ろした。そこにはモーリスとグランが見える。彼らは目覚めたメレディスを見てほんの少し安心したのか、その目に親しみが過ぎったのを見逃さなかった。
けれども感動の再会はまだできない。彼ら一同は流石にルイスが蹲っているとは思っていなかったのか、ラファエルたちを見るなりモーリスは戸惑った。
「失礼ですが貴方が彼を?」
通報する前にルイスに手を出せばラファエルの立場すらも危うくなる。警官は痛みを訴えるルイスの手を押さえながら、ラファエルに尋ねた。
「そうだ……」
「いいえ、わたしが殴りました」
ルイスの声と同時にメレディスが話した。
ルイスがラファエルに殴られたと虚言した理由はおそらく、男が女性に殴られたことを世間に知られないためだ。そうなれば一生彼は笑いものにされるだろう。
「貴女が? レディー、失礼ですが華奢な貴女が大の男を殴るなんて……」
「あらそう? 何ならもう一度この場で殴りましょうか?」
この場でもう一度再現すれば、もう誰も疑う者はいなくなる。
メレディスは拳を作り、蹲るルイスを捉えた。
「今度はその自慢の鼻をへし折ってさしあげましょうか」
メレディスの声に、ルイスは、ひいっと声を上げた。警官はどうやらこの状況でメレディスの発言が真実であると納得してくれたらしい。