今宵は天使と輪舞曲を。
「さあ、忙しくなりますよ、この一件を嗅ぎつけた記者たちが押し寄せて来ることでしょう。ですが、メインはルイスが企んだ事件ではなく、この子たちが正式に婚約したことです。彼らにはブラフマン家の花婿と花嫁のことを書いてもらわないといけませんからね」
彼女は執事たちに向き直り、両手を叩いて命じた後、息子二人を視界に入れた。
「ラファエル、グラン。いいこと? 彼らには事件のことを忘れていただかないといけません。しっかり演出するのよ?」
「はいマム」
兄弟はどうやっても母親には頭が上がらない様子で苦虫を噛むようにして大きなため息をついた。
「やれやれ、ぼくたちの家系はやはり女性が強いらしい」
ぽつりと不平を話すグランは、けれど本当に心から思っているわけではない。彼もラファエルも。女性こそが元気であることこそ家の繁栄であることを知っているのだ。だからこそ、レニアは聞かなかったことにした。
「さあ、ラフマ。今日から貴女はこの屋敷に滞在してもらうわよ、ドレス作りを手伝ってもらわなければなりませんからね!」
「はい、奥様」
ラフマは目尻に涙を浮かべて大きく頷いて見せた。
「さてメレディス、貴女には早く元気になってもらわなければいけません。執事、料理長に胃腸にやさしい食材で美味しいものを作ってと伝えてちょうだい」
「なんだか義母さまが一番張りきっている気がするわ」
「当然よ! だってお母さまはずっと兄さんたちの結婚を夢見ていたんだから!」
メレディスとキャロラインは顔を見合わせて笑った。
《完》