今宵は天使と輪舞曲を。

「実は、君が攫われた時間帯とほぼ同時刻に父さんよりも一〇歳若いくらいのグレーの目をした細身の男性を見たんだ。その後だよ、例の現場で君を探している最中で、髪の長さは腰まである、金髪の青い目の女性を見たんだ。彼女はメレディス、君が倒れている場所を指差してぼくを誘ってくれた。おかげで君が丸焼けになるまでに助け出すことができたんだ。信じられないかもしれないけれど、もしかするとぼくが見た二人の男女は君の両親ではないだろうか」
 まさにメレディスが頭を過ぎらせていたことを、ラファエルは口にした。
「そんな……まさか」
 メレディスが首を振れば、
「可能性はあると思うわ、だってきっとご両親は貴女を大切にしていたと思うもの」
 今まで事の成り行きを見守っていたキャロラインが口を開いた。
「ぼくが思うに、君はひとりきりじゃないんだよ」

「君はご両親に守られているんだね」
「そうですね、きっとそう……」
  モーリスとレニアは静かに頷いた。
「ああ、お父様、お母様!」
 メレディスはブローチを抱きしめ、わあっと泣いた。
「メレディス、貴女の心にはご両親がいますが、今この場所ではわたくしたちもおります。独りで悩まずにどうか頼ってちょだい」
「ああ、お義母様……」
「メレディス、ぼくの気持ちは変わらない。結婚してくれるね?」
 もう喉が詰まって何も言えない。メレディスが同意の印にゆっくり頷けば、二人の行く末に固唾を呑んで見守っていた執事たちもわあっと一斉に拍手した。


< 438 / 440 >

この作品をシェア

pagetop