今宵は天使と輪舞曲を。
「彼はメレディスを名誉を高めてくれる相手だと思っているみたい。彼女のことなんてひとつも考えてないんだから。わたしがメレディスに話しかけなければ彼、きっと怒鳴り込んで来ていたわ!」
信じられないと言わんばかりにキャロラインはふんっと鼻を鳴らした。
「ところで疑問なんだが、キャロライン、君はなぜそうまで貴族に詳しいんだ?」
キャロラインは今夜初めて社交界というものを経験している。貴族の事情に関して自分以上に精通していることが不思議でならなかった。
「社交界デビューをするのならきちんと知っておけとお母様に叩き込まれたのよ。どこかの誰かさんたちが女性に興味を持たないから飛んだとばっちりを受けているわ」
キャロラインは大きな目をぐるりと回してうんざりした様子でそう言った。
ラファエルとグランはそれぞれ顔を見合わせると苦笑を漏らした。
「心強い妹がいて助かるね」
グランはにやりと笑った。
ブラフマン家兄弟は彼女に申し訳なく思うものの、それでも二人は謝る気はなかった。
それというのも、妹が短気を起こす時には必ずといっていいほど自分が不幸だということを思い知った直後に起こることを彼らは知っていたからだ。無理に謝罪してしまえば彼女にそれを分からせてしまう効果があった。
「でも、まあ……お母様の知識はけっして無駄ではなかったっていうことね。おかげで彼女の事情はわかったわ」